Mendeley 機関版ワークショップ「Mendeley: 研究活動の新しい基準と図書館の役割」参加レポート

P1050750

2012年5月29日(木)に、スエッツ社主催の Mendeley 機関版ワークショップ「Mendeley: 研究活動の新しい基準と図書館の役割」に参加・講演する機会を頂きました。招待して下さったスエッツ社のみなさんにはこの場を借りて改めて御礼申し上げます。

さて、スエッツ社と言えば外国雑誌取扱専門代理店なわけですが、2012年1月12日に Mendeley 社とスエッツ社が「Mendeley Institutional Edition powered by Swets」(以下、Mendeley 機関版)をサービス提供すると発表して私たち Mendeley ファンを驚かせました。発表からこれまでの数ヶ月間は準備期間だったのでしょうか、いよいよ国内初の関連イベントが開催ということで、Mendeley 機関版を理解することは勿論、また Mendeley Advisor としてご依頼頂いた講演を目的に、そしてワークショップに集まるみなさんとの出会いを楽しみに参加してきましたので以下そのレポートを。

ワークショップはベルサール八重洲で開催され、図書館員の方々を中心に40〜50名は参加されていたのではないでしょうか。
13~17時までの4時間、テーマ「Mendeley: Generic Viagra Online Pharmacy 研究活動の新しい基準と図書館の役割」に沿って、スエッツ本社(オランダ)からグローバル・マーケティング・ディレクターの Michael Leuschner(マイケル・ロイシュナー)さん、Mendeley Advisor として早稲田大学理工学術院の渡邉峰生さん、そしての計3人が登壇し、Mendeley についての講演、そしてその後のQ&A セッションで熱く盛り上がりました。

P1050686

先ずは、2012年3月27日にスエッツ社(Swets Japan)の会長(Chairman)に就任された深田良治氏から開会の挨拶。

深田さんは、オランダで音楽を学び、1974年からエルゼビア(オランダ本社)にお勤めになったことを皮切りに、エルゼビア・ジャパン社シュプリンガー・ジャパン社で代表取締役を務められる等、37年間にわたり国際出版分野で活躍された業界第一人者。
1982年(July 1982 – March 1987)に日本スエッツ株式会社の設立とともに代表取締役社長に就任されて以来の古巣復帰ということで、Mendeley 機関版サービス開始にはこれ以上ないタイミング。
1982年に日本スエッツ株式会社を立ち上げた当時の写真がスライド上に映し出され、「オフィスに机と電話だけでスタート」されたという言葉には会社の歴史の重みと深田さんご自身のビジネスへの執念を、その言葉の端々・行間から読み取った次第で、もうそれだけでも感動でしたが、ワークショップ時間内に何度となく気さくにお声掛け頂き、また翻訳者や他の参加者への気配り発言も多々あり、人柄にすっかり惚れてしまった次第です。

P1050688

そしていよいよプログラム開始。オランダから来日されたマイケルさんより、「SOCIAL RESEARCH COLLABORATION」というタイトルのスライドで講演を頂きました。
Facebook, LinkedIn, Twitter, Blog, YouTube などのソーシャルメディア普及に伴い、共同研究が重要(importance of research collaboration)であるという共通認識のもと、科学分野においても研究目的の共同研究環境(Social Research Collaboration PIatform)しかもソーシャルネットワーキング的なサービスが求められているのではないか、と提起されてスタート。以下その根拠としてComScore が発表した数字(14, 16ページ目。Asia Pacific 33%、等)を引用し、アジアそして世界中でソーシャルメディアを利用した科学分野における研究コラボレーションのニーズは高まってきている、と主張。
或いは Royal Society が発表した Knowledge, networks and nations Global scientific collaboration in the 21st century(PDF、20, 59ページ目)によると、1996-2008に出版された学術誌の年間成長率が示され(59ページ目)、また共同研究された論文の引用数も年々増加している(20ページ目)、という数値データを示した後、今後も共同研究は増えていくであろう(42ページ目)、と解説。
そんな背景において、Research Workflow の在り方は変わり、それに対して図書館はどの様にそれをサポートできるのか、と問いかけ(CIBER, University College London. Emerald Group Publishing Ltd. 14 December 2010(PDF、16ページ目))、Mendeley や Mendeley 機関版は、そうした問題やニーズに対し手助けをできるのではないか、という前フリでした。

Mendeley は “Facebook for researchers” platform 等とも呼ばれるなど、研究者向けソーシャルネットワークは目玉機能のひとつ。単なる文献管理サービスの枠組みを超えた研究ツールとして人気を集めており、ウェブ時代における共同研究のプラットフォームとして評価されているワケですが、そこに敏感に反応する人も増えてきました(シンガポールの図書館員ブログ)。
# 因みに今回のワークショップにはシンガポールからも女性スタッフの方がお越しになっていました。写真撮られてたけど、いつどこで掲載されるかな。

研究者向けソーシャルネットワーキングなどについては最近英語記事でも多く見受けられ(これとかこれとかこれとかこれ)、トレンドというか既に定着しつつ、新しいサービスもどんどん生み出されているといった感あります。

さらに踏み込むと、そうした様々なデジタルツールが研究分野で利用された結果、文献個々の評価(インパクト)をリアルタイムに計測出来るのでは、という流れにも発展し、altmetrics という概念が生み出されていくワケですが、これについては僕自身最も関心ある分野のひとつで、自身プレゼンテーションにも無理矢理関連付けて触れたワケですが、Tim Berners-Lee が同僚との間で論文を手軽に共有するために World Wide Web を開発した1990年12月以来20年が経過した今、ソーシャルメディアの台頭・普及により、ようやくウェブが科学に変革をもたらす時が来た、というのがこの分野で頻繁に使われる文句となってきた気がします(これとかこれとかこれ)。

P1050697

当初のプログラムではマイケルさんによる講演は「MendeIey(エンドユーザー版)のご紹介」ということでしたが、それは後ほどのお楽しみとなり、
続いて Mendeley Advisor 渡邉さん(早稲田大学理工学術院)による「Mendeley エンドユーザーの視点から」という講演。

Mendeley T シャツで登場した渡邉さんは、Mendeley を利用し始めて1年3ヶ月目ながらすっかり Mendeley の魅力にとりつかれている現役研究者。
早稲田大学理工学術院で研究助手として医療福祉ロボットの研究開発をされているとのことで、工学系・医学・理学療法系の文献を Mendeley で管理されている研究者視点で、ご自身の Mendeley 利用法・Mendeley から恩恵を受けている点・Mendeley 利用して何が嬉しいか、そして Mendeley への「こんなのあったらいいな」的要望等をプレゼンされました。
マイケルが冒頭でお話された通り、現在は複数のソーシャルメディアがあって、それぞれ目的別に利用している方も多く、渡邉さんと研究仲間も例外ではない様子。Facebook はプライベートなことに使いたいから仕事や研究については勘弁して欲しい、LinkedIn はあくまでビジネス上のお付き合い目的にネットワーキングしたい、といったところに Mendeley を研究仲間だけのネットワーキングに活用出来るのは嬉しい、といったお話もあり僕以外にも多くの方々が頷いてた筈。
また、何気に iPad(や iPhone)で文献読めるのも研究者にとっては嬉しいところ、だと。周囲には iPad 所有の研究者が多い様で、ノマド的活用は理系研究者の如何を問わず、国内外問わず流行でもあるのでしょう。

現在の公式アプリでは、論文は読めるがアノテーションやコメントを付けれない・同期出来ないといった不満がある一方、裏技を編み出してその制約ある環境を楽しんでいる方々もいらっしゃる様で、「iPad で論文読んだりアノテーションなら Papers もあるじゃない」といった意見はそれはそれでごもっともと言う一方、ユーザ側でカスタマイズする楽しみもあるのが Mendeley とも言えるのではないでしょうか。
因に Mendeley で管理している文献を、Android 端末Kindle で読むこともできます。

通常、Mendeley は無料で利用できますが(そのプランを「EARHT」と呼ぶ)、Mendeley Advisor になると自動的に「SOLAR SYSTEM」にアップグレードされ、1GB の容量が 7GB になり、渡邉さんもそのサイズは確認済みとのこと。

Q&A セッションで「現役研究者である渡邉さんにとって、1GB で足りるの?」といった質問に対しては Dropbox を例えに「Dropbox は標準の無料プランで2GB の容量が用意されているが、普通に使っていくとそれでは足りなくなり次のプラン(有料)でやっと安心できるのと Mendeley も同じ感覚」的なことをおっしゃっていましたが、これもなるほど、と頷く。「Mendeley Advisor いいなぁ、、自分も」と思った参加者の方、結構いらっしゃったのではないでしょうか。何せ $4.99/month すらが無料になるワケですから。因に、Mendeley 機関版が導入されると、登録された機関ユーザは自動的に「SOLAR SYSTEM」にアップグレードされ、しかも個人として支払いの必要はないとのことです。
ただし、容量を増やしたいだけなら保存先を Dropbox や SugarSync といった外部ストレージに切り替える等の裏技もあるワケで、Mendeley 自体も現在のビジネスモデルは Premium Packages と Mendeley 機関版 のみであることは認めているものの、容量問題だけで Premium Packages にユーザを導けるとは思っていない筈。Evernote や Dropbox の様に、有料と無料にはどれだけの違いを打ち出せるか、今後に期待といったところでしょうか。

# 余談ですが、渡邉さんが当日着用されていた Mendeley T シャツ、これも Mendeley Advisor だからこそ(勿論、無料で)手に入れることが出来るメリットもあったりします。

P1050731

そして私の出番。渡邉さんと同じく与えられていた御題は「Mendeley エンドユーザーの視点から」でしたが、Mendeley の基本的機能紹介と研究者視点での利用法などは既に話されているだろうという前提で、次の様なスライドを用意しました。
テーマは「Mendeley が図書館に与えるであろう影響について」。
[gigya src="http://prezi.com/bin/preziloader.swf" type="application/x-shockwave-flash" allowfullscreen="true" allowscriptaccess="always" width="550" height="400" bgcolor="#ffffff" flashvars="prezi_id=vq6yazu3mwcl&lock_to_path=0&color=ffffff&autoplay=no&autohide_ctrls=0"]

この後の Mendeley 機関版紹介、デモンストレーションにつながる様ちょっとだけ意識し、私なりの視点、特に関心がある「オープンアクセス」を切り口に、Mendeley と図書館との関係についてお話ししました。
とはいえ、当初与えられた時間は5分。何度スライドを見直しても、何度予行練習しても、相当早口に喋って約8分は必要。
ということで、講演直前に頼み込んで約10分の時間を頂くことに成功し、すっかりマイペースで喋ってしまいました。
お話しさせて頂いたのは主に3つ。「いつ Mendeley を知り、これまでどう Mendeley とかかわり、Mendeley アドバイザーになったのか」というマイ・ストーリー。「そもそも Mendeley アドバイザーってどういう人?」を解説。そして「Mendeley をオープンアクセスという切り口で見た時、今後大学図書館にとって如何なる影響があるのか」という予測。

振り返れば、人前でお話するのは2009年10月23日に東京大学 情報学環・福武ホールで開催された Open Access Week 2009 セミナー「Open Access “Friday & Night (+ Shinya)” 2009」以来2年7ヶ月振りというご無沙汰。

スライドの詳細解説については、改めてエントリを立てます。

P1050743

さて Mendeley Advisor によるお膳立てはここまで。ようやく本題の Mendeley 機関版説明とデモにマイケル再登壇。
インタフェースや機能は殆ど通常(エンドユーザ版)と同じですが、Mendeley 機関版のロゴが付いたレアなデモ画面で、先ずはグループ機能について、SWETS のグループを用いて解説。

Mendeley でグループを作った方なら一見殆ど差異ないことに気づくのですが、グループ内メンバーのプロフィールを確認出来たり、グループ内の更新情報は Facebook のニュースフィード似な画面で確認出来たり、といった具体ですが、ひとつ大きな違いが「Analytics」つまり分析機能。いやこれこそ機関版ならではの目玉機能。
メンバーが読んでる最も人気のジャーナルはどれなのか(NatureScience?それとも PLoS One?)をトップ5表示してくれたりします。
「Reading」セクションでは、グループ内メンバーがどれだけ論文を管理したかの期間(月・年)毎の推移や、上述のジャーナルランキングに加え、文献単位でもどれがみんなに一番読まれているか、といったランキング情報まで表示してくれます。
# 文献管理、手を抜けませんね。笑
しかも、自分の所属機関が購読しているジャーナルの文献であれば、これらランキング情報からワンクリックでその文献に辿り着ける「full text」マークまで表示されるという、研究者にとっては嬉しく図書館にとっては雑誌購読の必要性判断目安にもなるというワケですね。
「Publishing」セクションというのもあり、こちらは「Reading」セクションと同じ項目が表示されるのですが、文字通り、「読まれている情報」ではなくグループメンバーによる「投稿された文献情報」の管理画面。
グループ内でどの期間にどれだけ投稿があり、どれだけ読まれているかといったランキング。まして、どのジャーナルに投稿したか、まで。メンバー内投稿ランキングまであるワケですから・・
# 研究発表、手を抜けませんね。笑
その他「Impact」セクション。これも上記2セクションと同様に、どの文献が、或はどのメンバーが一番読まれているかといった指標が示されます。

無料版で研究室単位のグループを作成されていれば、「あまりグラフの凸凹が生まれないだろうし、ランキングも固定的になるかも」といったことが思い浮かぶかも知れませんが、グループ内のメンバー数が3桁な状況を妄想してみると、ここでモニタリングされる情報は、これまで想像の域でしかなかった数々の情報と判断材料を管理者にもたらしてくれるのではないでしょうか。

因に私は @MyOpenArchive というグループをつくっていて、メンバーの数は現時点で261名。ただし、期間版ではないので、どのユーザがいるのか、どのユーザがグループ内にどんな文献を共有したのか、は分かっても、上記分析情報は見れず、見れたら相当なメリットがもたらされるだろうなぁ、と妄想します。
昨年起きた東日本大震災直後、私なりに何か出来ないかとの思いから衝動的に Earthquake and Tsunami http://ts4arts.org/sales/ というグループを作成し、世界中のこの分野の研究者へ情報共有を呼びかけたりしました。こちら現時点で118名のメンバ数。

結果や成果は伴いませんでしたが、こうした取り組みが他の事例で注目を集めた先には、膨大な文献情報から必要とされる情報を瞬時に取り出すことが出来るのではないか、などとも妄想します。

以上の解説とデモを踏まえ、マイケルが最初のプレゼンで示した通り、Mendeley(と機関版)は研究者のワークフローを変えるばかりか、図書館は新しいスタイルの研究支援活動を実現できる、とまとめて終了。

最後の Q&A セッションはワークショップ終了時間ギリギリまで多数質疑応答があり、最後の方ではマイケルが「そういう質問するってことは、機関版購入するの?」と会場内を笑顔で満たす一面も。
代表的な質問というか要望は、やはりきたかという「日本語問題」。
メニュー表示、日本語文献取り込み、日本のジャーナルに対応した引用スタイル・・やはり言語の壁は高いですね、特に日本の場合。
これに対して Mendeley は現在ローカライズに取り組む可能性はない、ときっぱり断言されていました。学術コミュニケーションの世界、共通言語は英語で、英語対応だけで十分、という判断の元、なのかな。
一方で、機関版を導入すれば(いや、導入しなくとも)引用スタイルは独自で設定可能だし、丁度ワークショップ開始直後にプレスリリースされ、その後ものすごい注目を集めている「日本語論文 to Mendeley」など、API を利用したサードパーティによるローカライズ支援ツールも期待できるでしょうし、Mendeley の主張はごもっともなので、慣れていく、いや、そういう方向(英語で文献管理し、英語で共同研究し、英語で発表する)に行かざるをえない、とも思ったり。

そんなこんなで色なことを吸収でき、色んなことを考えさせられる、あっという間の4時間でした。
また、始まる前も途中の休憩時間も終わってからも、たくさんの方々に声を掛けて頂き、情報・名刺交換できて、ワークショップ参加本当に楽しかったためになった充実した一日。この様な機会を下さったスエッツのみなさん、最後にもう一度、御礼申し上げます。

最後に、(左から)渡邉さん、深田さん、マイケルさん、坂東、(現在、Mendeley 機関版トライアル中の農林水産研究情報センターの)林さんと、笑顔のスナップ撮影が冒頭の写真。
マイケルさんには「近々オランダ本社行くから、飲みに連れてってくれ」とお願いし「勿論!」と約束を交わしたのはここだけの秘密です。

(おまけ)
P1050745

講演が終了し、Q&A セッションに入る前に、Yes/No クイズが幾つかあったんですが、固くなりがちな雰囲気を和らげる非常に気の効いたものでした。中でも皆の爆笑を誘ったのがこちらの写真。ひとつ前のクイズで「Mendeley の名の由来は?」とあったんですが、通な Mendeley ファンならご存知の通り?ロシアの化学者メンデレーエフと遺伝学の祖メンデルからもじったものなのですが、じゃぁその「メンデレーエフ」の顔写真はどちらですか、と。

一方はメンデレーエフ。ではもう一方は、一体誰・・

Don't be shellfish...Tweet about this on Twitter17Share on Facebook37Share on Google+4Share on LinkedIn2

Leave a Reply